八代を過ぎたあたりから、横殴りの風に車が
揺られた。
熊本新港を抜け海岸線にでると、夕刻の空は不気味な程
どす黒く立ちこめたいたが、対岸に見える雲仙岳の上空は
そこがけ空間が明るく、黄金色の晴れ間がのぞいていた。

昨日の夕日に続き、今日も夕焼けが見れるんじゃないか?
そう思い、急いで見晴らしの良さそうな高台を探した。
小さな港町で、河内塩屋と書かれた信号機を山の方へ
曲がった。
狭い農道を登って行くと、石垣で築かれた段々畑に出た。
そこはみかん畑で、夕日を浴びた畑の上空すーっと
虹が架かった。

畑には小雨まじりの暴風が吹き付けており、三脚に
取り付けたカメラをしっかり押さえながら海の方へレンズを向けた。
みかん畑の向こうに港が見え、見る見るうちに空が変貌した。

「うぉ〜」と、うなり声を上げ空を見続けた。

やがて、辺り一面が真っ赤に染まり、
夢と、現実との判断がつかないくらい混乱しながら
シャツターを押した。


夕日の赤い残照は、日が沈んでからもしばらく続き、
2日続けて感動を届けてくれた、台風18号に感謝した。

人吉に夕方4時頃戻る。

この日も一日中歩き回ったので、くたくただ。
この日は一昨日とは別の公衆浴場、
「元湯」に行った。新温泉より少し新しいが
入浴料は200円と、肌にも懐にも優しい。
温泉から帰り、橋の上から流れを見つめた。

日没前の河原に椅子を持ち出して、ビールを飲んだ。
う〜〜ん。うめ〜〜と、至福の時間をすごしていると
空が朱色に染まりだし、急いでカメラと三脚を取りに行った。
釣り人の姿が茜色の空に影絵のように浮かび、
台風18号の接近が、思わぬ感動を届けてくれた。

河川公園も夕日に照らされていたが、そこいいる人々は
だれも夕日に気を止める様子は無く、
その無関心さが不思議に思えた。
